犬のしっぽを切る“断尾”をヨーロッパ諸国やオーストラリアが法律で禁止にしたことが話題になりましたが、2020年の今でも日本を含めた世界各国には、まだまだ習慣として残っています。
断尾の歴史は非常に古く、慣習的に断尾をされる犬種は約50種類以上。
現在のところ世界的に公認されている犬種が約350種類なので実に7分の1を占めることになります。
代表的なところでいうと、
- トイプードル
- コーギー
- ドーベルマン
- シュナウザー
- ヨークシャテリア
などです。
そして過去と現在ではその「断尾」をする理由にも大きな違いがあります。
日本にはまだまだ断尾という習慣があることへの認知度がほとんどありません。
例えばドーベルマンを想像した時なんかは、尻尾が短いドーベルマンを想像すると思います。
そしてペットショップに並ぶ断尾が慣習化された犬種たちは100%「断尾済み」と言っても過言ではありません。
なんとなくしっぽを切る犬種がいることは知っていても果たして何のためにしっぽを切っているのか、理由を知っている人は少ないのではないでしょうか。
もしくは元々しっぽが短い犬種がいると思っている人もいるかもしれません。
そこでこの記事では断尾のことについて詳しく紹介していこうと思います。
これからワンコを迎え入れようと考えている方はぜひ読んでみてください。
断尾がされるようになった理由
断尾をする歴史的理由としては、
①狂犬病を防ぐため
昔は断尾によって狂犬病予防ができると信じられていましたが、勿論現代では医学的根拠は無く狂犬病予防を理由に断尾を行うことはありません。
②尻尾に怪我をしないため
尻尾への怪我予防として行われるケースもあります。
例えば牧羊犬などは自分より大きなヤギや牛、馬といった大型の家畜と生活をともにしています。
そのため尻尾を踏まれ大怪我をしないための処置として断尾が行われていました。
また闘犬や護衛犬として育てられた犬種は対戦相手に尻尾を噛まれて怪我をしないため「できるだけ弱点を減らす」という理由で断尾をされていました。
現代でもこの慣習は引き継がれ、ドーベルマンの断尾が代表的な例となります。
③狩猟をしないという事をアピールするため
犬は古来より人間とともに狩りをするパートナーとして活躍してきました。
犬にとって尻尾はバランスをとるために必要な部位です。
小回りを利かせて素早く動くためにも、尻尾は重要な役割を果たします。
なので、尻尾が無い犬は狩りが上手くできないと考えられていたわけです。
そして狩猟が許可制の地域では「私は狩りをしませんよ!」というのを信じてもらうために犬の断尾を以て示していたのです。
現代では狩猟をしないのを示すためではなく、②を主な理由として狩猟犬でも断尾をしています。
現代の断尾をする主な理由
犬種にはそれぞれ「犬種標準(スタンダードとも言われます)」と呼ばれる見た目に関する細かい規定があります。
例えば、トイプードルの場合、「目はこの形、色」「腰の曲がり方こう」「口の長さやかみ合わせはこう」などなど…体の隅々まで本当に細かい規定があるんです。
簡単に言ってしまえば「トイプードルと呼ばれる犬はこういう形」というのが定められたものと思ってください。
なんのためにこんな細かい規定をしているのかと言うと「犬の分類と呼称」をしやすくするためです。
そして、これらの犬種標準と合致させるため、過去の名残から、美しいからという理由で今でも断尾は続けられています。
断尾のメリットとデメリット
メリット
断尾を行うメリットとして、猟犬や牧羊犬の断尾はあらかじめしっぽを短くすることで怪我をするリスクを回避するということがあげられます。
また、家庭で犬を飼う際にドアで挟んだり犬同士で遊ぶ時に噛んで怪我をしないようにする断尾を行うブリーダーもいるようです。
デメリット
しっぽには人間が考えているよりも重要な役割がたくさんあるため“断尾”という行為にはデメリットが多くあります。
まず、平衡感覚や身体能力が損なわれてしまうというデメリットがあげられます。
犬は本来しっぽを使って体のバランスを取ったり、泳ぐ時にはしっぽで舵を取ったりする動物です。
それを人間が断尾することにより、しっぽを持っている犬に比べて身体能力が劣るため犬が生活しにくくなってしまいます。
また、犬はしっぽを振ることで感情表現をしますが、断尾された犬は自分が思うように感情表現ができません。
このせいで社会性が欠けてしまい、他の犬との交流が減ってしまったり凶暴な性格になったりするといわれています。
他にも、感染症を引き起こすケースもあります。
最悪の場合、断尾の後遺症が残ってしまうことがあり、その後の犬の生活にも関わってくるため断尾を禁止すべきだという声も多数あがっています。
断尾の手術方法とは
結紮法
輪ゴムなどでしっぽを強く締め付け、壊死させる方法です。
生後2日~5日の子犬のしっぽにこれをすることにより約3日でしっぽが脱落します。
切断法
ハサミやメスなどを使用してしっぽを切り落とす方法です。
動物病院で行われることもありますし、ブリーダー自ら行うこともあります。
仔犬が感じる痛み
断尾は麻酔をかけずに行われる場合が多く、研究では生後数日しか経っていない子犬は痛みを感じないといわれていたり、断尾の際に鳴き声をあげることから痛みを感じているという異なった意見が飛び交っています。
ですが犬は「痛い」と言葉を発することができないだけで、普通に考えたら人間でもどこかを切ったりすると痛みを伴うわけですから犬も痛みを感じていて当然です。
断尾は必要なことなのか
断尾には古くからの歴史があることはわかりますが、果たして現代のペットとして生活している犬たちにも必要なことなのでしょうか。
日本では断尾を禁止する法律がないため、断尾が今でも当たり前のように行われています。
断尾した姿が犬種標準を満たす犬種なら断尾をしてから子犬を売らないと売れ行きが悪くなるという理由や、血統書をつけるためには断尾しないといけないという理由で断尾するブリーダーも多いです。
断尾については非常に多くの議論がされており「歴史的背景」「医学的背景」「美容的背景」をもとに結果肯定されていますが、否定する中には以下のような意見もあります。
犬種標準はひどく恣意的で無原則である。2~3年ごとに変更されること自体、一種のインチキであり、少なくとも非常に自由裁量的であることを正直に示している。ほかのほとんどの分野に比べても、それはひどい。犬の科学(築地書館, P282)
仔犬のへや
また犬種標準と繁殖業者の関係を「自己完結的循環商法」という言葉を使って表現しています。
犬種登録協会はまず適当な標準を作り、それに基づいてチャンピオン犬とそうでない犬との差をつける。そして犬種標準を作った同じ人々が、実は繁殖業者であり、その標準に合った犬を繁殖する。こうして、犬種標準に適合した犬を求める人々に、自分たちが繁殖した犬を売りつけることができる。
仔いぬのへや
今現在もこういった議論は多くされています。
もしもこれからワンコを迎え入れようと考えている方は以上のことを踏まえた上で判断していただければと思います。
断尾について様々な葛藤をリアルに書いてくれているブリーダーさんのブログがありましたので、気になる方は参考にしてください。
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ですが実際イギリスは、犬に対する倫理的配慮と健康をとても重視しており日本よりずっと犬先進国なのです。
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